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前編に引き続きオルタナティブR&Bの後編になります。
向井太一などにより日本でも急速に知名度をあげたオルタナティブはここからさらなる広がりを見せます。
特にHIP HOPとの融合が凄まじく、前編で紹介したSIRUPのように歌とラップの差がほとんど無くなっていきます。
これは日本人の英語の発音や抑揚のレベルが海外アーティストと遜色無くなってきた証拠と言えるでしょう。
サウンドも様々なビートやJAZZ要素の追加でよりジャンルレスに広がっていきます。
最後までご覧いただければ幸いです。
それでは後編のスタートです。
後編最初の3組は皆、沖縄出身のアーティストです。
Yo-Sea 「LOOK AT ME NOW」(2018)
沖縄出身の大型新人Yo-Sea(ヨーシー)。彼もまた、ラップと歌の両方を器用にこなす才能の持ち主。
同じ沖縄出身のアーティストとのコラボレーションも絶えず、そこかしこでその才能を発揮。HIP HOP色強めの曲をチョイスしてもよかったのですが、今回はよりアダルトで疾走感溢れるこちらのR&Bナンバーをチョイス。というのも、彼の初EPにして傑作「7878」はHIP HOPをベースにしつつも、むしろ作品全体を包むのは唯一無二の静寂さと美しいファルセット寄りの歌唱。
そのため、アーバンテイストなオルタナティブサウンドとは一線を画しており、静かな夜の海を思わせる雰囲気に陶酔すること間違い無しです。
3House 「Dejavu(feat.Yo-Sea)」(2018)
こちらも沖縄出身の実力派ラッパー「3House(スリーハウス)」
彼もまた、日本語ラップというよりは歌とラップを巧みに操るSIRUPや上記のYo-Seaに近いスタイル。本曲は同郷のYo-Seaを客演に迎え入れた、ファンの間でも特に人気が高い傑作チルアウトR&B。特筆したいのは、重低音をしっかり響かせながらも、それを上手く中和するかのような3House、Yo-Sea両者の雑味が一切ない透明感のある美声。これはハマるわ。今回様々な曲を紹介しておりますが、個人的にかなりお気に入りの一曲。
3HouseとYo-Seaは本曲以外にも多数コラボレーションしているので気になる方は調べてみてはいかがでしょうか?
唾奇 「Walkin」(2017)
沖縄出身かつ近年を代表するラッパーといえば真っ先に浮かぶのがこの唾奇(つばき)ではないでしょうか。荒んだ幼少時代を経験してきた彼のリリックはいつでも欲望に忠実かつ退廃的。そんな唾奇のレパートリーの中でも本曲は、まるで視聴者そっちのけで独り言のように響くラップが特徴的で、自堕落な日常の内側にある拭いきれない不安や孤独をひしひしと感じます。思わず涙してしまったリスナーも多いのではないでしょうか。
相手に訴えかける、主張するといったHIP HOPのあり方を放棄したとも言えるリリックとフロウ、そこにオルタナティブテイストな落ち着いたサウンドが実に見事にマッチしています。
椎名純平 「mon amour」(2018)
椎名林檎の実の兄として知られる椎名純平。彼もまた妹に負けず劣らずの才能の持ち主。2001年にリリースした1stアルバム「椎名純平」はJ-R&B史に残る名盤。自身が参加するバンド「Dezille Brothers(デジルブラザーズ)」のライブ活動やアルバムリリースこそあったものの、ご自身名義の作品は長い間沈黙状態でした。
しかし、2016年実に10年ぶりのご自身名義のアルバム「...and the SOUL remains」のリリースを皮切りに、コンスタントに新譜を発表。心待ちにしていたファンを沸かせました。
2018年発表の本曲はMVや歌唱面にオルタナティブ要素を取り込み見つつも、ニュージャック・スイング調のビートを取り入れることで「踊れるシティポップ」と言える仕上がりに。
MALIYA 「Breakfast In Bed feat.Ryohu」(2018)
シンガーソングライターMALIYA。幼少期より様々な音楽に触れて育ちながらも、リリースされた楽曲を聴けば彼女がいかにブラックミュージックのエッセンスを好んでいるかがよくわかる。彼女も早い段階からオルタナティブテイストを取り入れたアーティスト。2016年発表の「Addicted」を前編で紹介しようと思ったのですが、今回はこの曲。上で紹介した椎名純平「mon amour」と同様ニュージャック・スウィングビートを取り入れながらも、楽曲が与えるイメージは真逆で、夜をテーマにした曲が多い中、朗らかな朝の空気感をチルめに表現しています。アンニュイな雰囲気で気張らず歌うMALIYAと、ダンスビートによるサウンドのギャップが不思議な魅力を放った一曲ですね。
JASMINE 「アタシの負け」(2020)
2009年「宇多田ヒカルの再来」と言われ、シングル「sad to say」で衝撃的デビューを飾ったJASMINE。一躍時の人と言わんばかりの活躍ぶりでした。そんな彼女も今やキャリア10年以上のベテラン。頭一つ抜きん出た歌唱力はさらに成熟し、思わず共感してしまいそうなリリックの世界観を見事に表現しています。
本曲はJAZZ要素の強いオルタナティブサウンドがいい意味で湿っぽく曲全体を包みながらも、押韻度の高いリリックのおかげでメリハリある聴き心地を実現。改めて彼女のポテンシャルの高さを痛感しました。
少々奇抜なルックスはご愛嬌ですね 笑
showmore 「now(feat.SIRUP)」(2019)
「showmore」はVo.根津まなみとキーボード兼プロデューサーの井上惇志による二人組ユニット。2015年結成、2017年に現在の二人組となる。R&BというよりはJAZZ寄りのアーバンポップ作品が多く。中でも本曲は90年代後半から00年代初期に「bird」及び「大沢伸一」が世に放ち大きな支持を集めた「アシッド・ジャズ」を思わせるサウンド。その跳躍感と歯切れの良いサウンドの上をVo.根津まなみとSIRUP両名の抑揚たっぷりの歌声が舞う。フレーズによっては根津まなみの歌声がbirdの歌声のように聴こえ、思わずハッとさせられます。
にしてもSIRUPがすごい...本当引く手数多なのも頷けますよね...
m-flo No Question (2018)
2017年、初代Vo. LISAが本格復帰したことにより遂にオリジナルメンバーで再始動したm-flo
本曲は彼らの代表曲「come again」を意識した疾走感ある高速ビートをベースにしつつも、再始動に当たっての決意が感じ取れる力強いリリックや、トレンドを取り入れたサウンドによって新生m-floを感じずにはいられない仕上がりに。それでも本曲が実にm-floらしいのは、様々なサウンドが思いのままに主張し合う超絶ミクスチャーサウンドであるにもかかわらず、ヴォーカルやラップをこれでもかというほど見せ付ける実に欲張りとも言える大胆さ。その上MVでは過去のMVの一部が映されたりとファンにはたまらない演出も。改めて偉大なグループだと確信するとともに、これからも唯一無二な存在であることは間違いないでしょう。
GeG 「Merry Go Round feat.BASI,唾奇,VIGORMAN,WILYWNKA」(2019)
プロデューサー/トラックメーカーのGeG(ジージ)とラッパーWILYWNKA(ウィリーウォンカ)、DJのVIGORMAN(ヴィガーマン)による三人組ユニット「変態紳士クラブ」と上記の唾奇、そしてHIP HOPグループ「韻シスト」のMCであるBASI(バシ)のコラボレーション作品。サウンドをプロデュースしたGeG以外の4名がマイクリレー形式でラップをしていきます。相当にチルアウトなオルタナティブサウンドに優しく溶ける4人のフローが極上のリラックスムードに誘います。多くのエキストラが参加しつつも、はしゃいで踊ってという雰囲気ではなく、お酒とともに穏やかに過ごすMVはまさしくオルタナティブ時代を象徴する仕上がり。コロナの影響で窮屈を強いられている我々の癒し。不朽の名作。
DJ HASEBE 「Midnight Dreamin'feat.SALU&SIRUP」(2019)
90年代後半から00年代前半、R&Bユニット「Sugar Soul」のメンバーとしての活動はもちろん、数々のアーティストの作品に携わり多くの名曲を生み出したレジェンド、DJ HASEBE。
そんなDJ HASEBEが自らコラボのオファーをした相手は時代のアイコンと呼べるSIRUPとSALU。世代を超えた共演に胸が熱くなりますね。
三者それぞれがソロとして十分な才能を発揮していますが、本曲はまるでお互いをリスペクトしあうかのような和気藹々とした雰囲気が特徴。SALUがOLD NICK(DJ HASEBE)のレコードを持ってるシーンに思わずニヤけてしまいます。
こういった形でのコラボレーションがいたって自然に実現するあたりに、R&BやHIP HOPの時代を超えた普遍性や楽しさを感じます。
iri 「Sparkle」(2020)
今回最後に紹介するのはシンガーソングライターiri
もはや言わずもがなですね。ブログをご覧になっている方の中にも好きな方結構いらっしゃるのではないでしょうか?
かくいう私も近年で最も好きなアーティストの一人です。
ロートーンポジションで深い響きを生み出す歌声は、メロウかつ最高にクール。
最初に彼女の映像を見たとき、音声だけ別のアーティストの曲が流れたかと勘違いするほどでした笑
複数のプロデューサーと様々なタイプの楽曲を制作しつつも、彼女自身に備わった確かなメロディーセンスと自身の手による等身大かつHIP HOP的リリックにより支持層を拡大。他アーティストからの楽曲提供の依頼も来るなど、注目点は歌声だけにとどまりません。
今回紹介するにあたって選曲にかなり迷いましたが、これからの彼女、そして音楽シーンを見越すとやはりこの曲かと。
UA、CHARA等との仕事で知られるKan sanoとともに作り上げたスタイリッシュなサウンドにグルーヴィーなヴォーカルがカッコイイ。
彼女のヴォーカルの個性が理想的に引き出されていると言っても過言ではないでしょう。
オルタナティブの枠を超えた次世代の息吹が、ここに確かに芽吹いています。
以上になります。
前後編合わせて20組のアーティストを取り上げましたが、他にもこういったオルタナティブ系のアーティストは山ほど存在し、上記はほんの一部に過ぎません。
しかし、2010年代半ばあたりから現在に至るまでの総括にはなったかと思います。
お気に入りの一曲はございましたでしょうか?
最後までご覧いただきありがとうございます。
ちなみにサイトの「CONTACT」のページにinstagramを追加しました。←すっかり忘れていました...
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ではまた次回!
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