8.オルタナティブR&B 前編

ご覧いただきありがとうございます。

今回は初の楽曲紹介記事になります。

テーマは「オルタナティブR&B」

2010年代のUSR&Bトレンドですね。

日本でもその流れを汲んだ楽曲が2010年代中頃から徐々に増加し続け、現在ではその手の楽曲で埋め尽くされてしまうのではないか...というくらいの広がり様です。

その様相はまるで、宇多田ヒカルやMISIAらの登場によって日本中がR&Bブームになった約20年前の日本と重なります。

現在、コロナウイルスの蔓延によって世界中が危機的状況ですが、奇しくも20年前の日本も深刻な不景気であり、その上ノストラダムスの予言で世界は滅亡するなんてささやかれていたもんですから余計に当時を思い出さずにはいられません。(コロナウイルスの被害と比較すればかなりマシな方だと思いますが...)


と、時代を振り返る話はこの辺にして本題に入りましょう。


「オルタナティブR&B」と言ってみたものの...正直オルタナティブの説明は時間がかかるし、かなりわかりづらい...


筆者もできるだけわかりやすく説明致しますので、最後までご覧いただければ幸いです。


「オルタナティブ」とは「もう一つの選択」「代替の」という意味で使われます。

そのため「オルタナティブR&B」は「元来のR&Bとは違う魅力を持ったもう一つのR&B」と言えます。


元来R&Bは...

・コーラスやアドリブで聴かせるヴォーカル主軸の音楽

・打ち込みやサンプリングといったヒップホップをベースにしたサウンド

・セクシーな大人の恋愛をテーマにした曲が多い

・ヒップホップと結びついているのでダンス要素も強い


といったイメージかと思います。


元来のR&Bが上記のような特徴を持つなら「オルタナティブR&B」は上記の特徴にこだわらず、ROCKやJAZZといった様々な要素を取り込むことになります。

その結果、広く「オルタナティブ」と言われるようになり、その音楽がROCK色が強ければ「オルタナティブROCK」、R&BやHIP HOP色が強ければ「オルタナティブR&B」といった具合に、ある程度の線引きは可能になりました。(とは言っても境界はかなり曖昧)

例えば、6人組バンドSuchmosはR&BやHIP HOPを自身の音楽性に取り込んでいるものの、ROCKやJAZZといった要素も同時に強く感じさせるため、これはどちらかというと「オルタナティブROCK」と言えるでしょう。(バンド形態ですしね)


上記のことを踏まえると、今回のテーマは「オルタナティブR&B」なので、ROCK色が強くないオルタナティブ楽曲を紹介していきます。(歌モノを取り扱うサイトでもあるので)今回も全2回に渡ります。

最後までご覧いただければ幸いです。


まずは前半10曲!

N.O.R.K 「YELL OUT」 (2014)

既に解散してしまいましたが、後に宇多田ヒカルプロデュースの元ソロデビューする小袋成彬(おぶくろなりあき)と國本怜(くにもとれい)による二人組ユニット「N.O.R.K」。

今でこそ本曲は日本におけるオルタナティブ黎明期の作品として知られていますが、本曲はR&Bの要素を含みつつも、深淵なサウンドとストリングスでむしろアンビエントやエレクトロニカと呼べる仕上がり。

小袋さんの繊細で美しいファルセットボイスが楽曲の世界観を引き立てます。

ちなみにこの曲が収録されたミニアルバム「ADSR」はショップによっては高値で取引される場合が多いので、見つけたら是非!


City Your City 「insomnia」(2015)

2015年にデビューしたVo.K-overとプロデューサーTPSOUNDによる二人組ユニット。

彼らも早い段階で最新鋭のサウンドを取り入れたユニットでした。本曲はEDM(Electronic Dance Music)的でありながらも、どこかフィルターがかかったような朧げなサウンドとヴォーカルが秀逸。

目元が一切映らない映像も妙に陰鬱で、禍々しい雰囲気を醸し出しています。

上記以外にも割と親しみやすいポップな曲も存在しますが、「share」のMVに関しては笑いなしでは見れません笑 気になる方は是非。



yahyel(ヤイエル) 「Once」(2016)

2015年結成。メンバー追加や脱退を経て現在は池貝峻、篠田ミル、大井一繭、山田健人による4人組。

その音楽性は一言では表現しにくく、R&B、HIP HOP、JAZZ、EDM、エレクトロニカ等をごちゃ混ぜにしたスケールある仕上がり。特に本曲は、序盤こそ落ち着いたJAZZ的な雰囲気ですが、サビに入ると一気にEDMっぽくなり思わず踊りたくなるような高揚感に包まれます。

さらに押韻度が高いリリックはHIP HOPを思わせます。

ちなみにメンバーの山田健人さんは映像作家で、yahyelのMVはもちろん、下記の宇多田ヒカル「忘却 featuring KOHH」のMVも監督しています。


宇多田ヒカル 「忘却 featuring KOHH」(2016)

2010年に活動休止を発表してから6年、本格再始動した彼女のアルバム「Fantome」は再び世に大きな衝撃を与えました。(当時私もめちゃくちゃ嬉しくて、急いでCDを買いに行きました笑)中でも印象的だったのは、以前はほとんどなかった他アーティストとのコラボレーション。どのコラボレーションも傑作と言える仕上がりですが、本曲は上記のN.O.R.K「YELL OUT」に通じる深淵で荘厳なサウンドに、今にも壊れてしまいそうなKOHHのラップが痛々しく絡む。宇多田ヒカルの歌唱も言うまでもなく素晴らしいですが、KOHHのラップに尾崎豊や井上陽水の面影を見たのは私だけでしょうか。


向井太一 「SLOW DOWN」(2016)

ここまではどちらかというとダークな雰囲気の曲が多かったですが、この辺から徐々に親しみやすいR&BやHIP HOPの要素が強くなっていきます。シンガーソングライター向井太一。日本でオルタナティブR&Bが話題になり始めたのも、彼による功績が大きいかもしれません。オルタナティブの要素を自らに血肉化し、甘い歌声で表現する様は、まさに新時代のカリスマ。中でも本作は先に挙げた4作のようなダークな音使いを、爽やかな歌声と軽快なリズムが押しのける。オルタナティブ時代の到来を告げるかのような一曲。昨年はJ-R&B界の重鎮、Full Of Harmonyの「I Believe」をカヴァーし話題になりましたね。



CHEMISTRY 「Windy」(2017)

言わずと知れた堂珍嘉邦と川畑要からなる最強ヴォーカルデュオCHEMISTRY。デュオでの活動を休止していましたが、2017年に再始動。大ヒットした初期の名曲たちを手がけた松尾潔を再びプロデューサーに招き入れ、オルタナティブR&Bトレンドを吸収。完成した本作はオルタナティブR&Bをフォーマットとしつつも、「あくまで主役は二人の歌声」と強く主張する歌モノJ-POP。ブリッジ部分からラスサビにおける突き抜けるような歌唱は、オルタナティブにおける少しぼやけた空気感をまさしく「風」のように押しのける感覚を想起させます。

それにしても二人の佇まいがカッコよすぎる!アラフォーと思えないですよね...


TOKYO HEALTH CLUB TAXI (feat.嶋野百恵) (2017)

現在のHIP HOPを語る上で最も外せないヒップホップグループ「TOKYO HEALTH CULB」略して「THC」

DJ兼トラックメーカーのTSUBAME(ソロ活動もしている)と3人のMC、SIKK-O、JYAJIE、DULLBOYからなる3MC1DJ型のグループ。全員が美術大学出身である。

2010年の結成以降徐々にファンを拡大、ユニークなリリックに緩めのフロウが特徴。加えてオルタナティブ的サウンドを纏いながらも、根幹をなすのはオーセンティックなHIP HOPサウンドなため、聴き心地はすこぶる良い。本曲はそんな彼らが2017年に放ったミニアルバム「MICHITONOSOGU(未知との遭遇)」に収録された「TAXI」のRemix。なんと私の大好きな「嶋野百恵(R&Bシンガー)」が参加しているではないか!

嶋野百恵が客演しているということもあり、いつもよりR&B度数は高め。これはカッコイイ!


RIRI 「That's My Baby」(2018)

ホイットニー・ヒューストンなどをプロデュースしたことで知られるデビット・フォスターが主催したオーディションに出場し、僅か11歳でファイナリストに残りその才能が知れ渡ると、10代半ばで憧れの歌手であるAIとの共演及び共作を経験。2018年にメジャーデビューを飾ってからというもの、その圧倒的な歌声で国内外問わず高い評価を受けている本命中の本命。

1stアルバムの時点で収録曲の大半を海外の大物プロデューサーが手がけており、そのサウンドも折紙つき。

既に多くの名曲を世に送り出しているので、どの動画を上げるか悩みましたが、とりあえずはこの動画で...

EDM調のパーティーチューンも壮大なバラードも最高の歌声が鮮やかに彩ります。オルタナティブとかもはや忘れそうな勢いですね...

現時点でまだ20歳...

末恐ろしいですよね..



SIRUP 「Synapse」(2017)


SIRUP 「LOOP」(2018)

前編ラストを飾るのはやはりこの男。SIRUP無くしてオルタナティブR&B、いや今の音楽は語れないでしょう!定番過ぎますが代表曲を2曲。

上記の「Synapse」を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられません。

軽快にラップしてたかと思うと、次の瞬間にはソウルフルに歌い上げている。

SIRUPはSing&Rapの造語。メロウなシンガーであり、テクニカルなラッパーでもある彼の歌声はまさに変幻自在。英語の語感も実にスムースで、最高級の聴き心地と言えます。

それでいて単なるトレンドの追求や模倣ではなく、確固たるSIRUPらしさがあるのは、彼に備わった確かなセンスと、いつの時代もgoodなミュージックを追い求める姿勢があるからこそ。

SIRUPのMVの中でも屈指の再生回数を誇る「LOOP」は、そんな彼をさらに飛躍させることになったご存知名曲。

ラスサビ前の着信音の意味を考えると最高に切ないです。

心地よさと切なさ、そしてカッコよさを高次元で両立させた本曲は、これからも多くのリスナーに寄り添うでしょう。




以上で前半の終了です。

いや〜長い!笑

9組10曲ですね...

日本におけるオルタナティブR&Bの到来から、発展までといったところでしょうか。

みなさんのお気に入りの曲はありましたか?

次回は今最も勢いのある例の女性シンガーや、沖縄出身の実力派アーティストが登場します。


最後までご覧いただきありがとうございます。

ではまた次回!




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