6.退化した地声 後編

ご覧いただきありがとうございます。

前編では、多くの方が普段何気なく出している声はそもそも「地声」とは呼べない可能性が高く、「地声」になっていないからミックスが上手くできないというお話しをさせていただきました。

※前回の記事をご覧になられていない方は是非「4.退化した地声 前編」をご覧いただければと思います。


ところが前編の内容だけでは、冒頭で皆様に問いかけた「地声とは何ですか?」という元々の疑問は解決できません。

そこで後編では、最終的に「地声とは何なのか?」という疑問に対する回答を提示したいと思います。

具体的な練習方法に関しましては、また後日紹介できればと思っておりますのでよろしくお願い致します。

最後までご覧いただければ幸いです。



それでは後編のスタートです。


前編の復習になりますが、前編の冒頭における私からの皆様に対する質問

「地声とは何ですか?」

この質問に対する回答の中で、唯一正解としてもいい回答が...

「普段何気なく出している声」

という回答でした。

というのも、「普段何気なく出している声」=「地声」の方も存在するからです。


しかし、ここで私が強調したいのは

「普段何気なく出している声」=「楽な声」ではないということ

ここに、今回の最大のポイントが隠されています。


人の話し声は実に多種多様です。

そして、話し声はその人にとって楽に出せている声のはずですよね。意識して頑張って出している人はほとんどいないはずです。

「鼻声」の人も、「ダミ声」の人も、「曇り声」の人も...



そう、楽に出しているんですよ。




「体感」としては...




もし、気づかない内に声帯や喉がすごいダメージを受けているとしたら、体感は楽でも、本当に楽と言えるでしょうか?




声は声帯という非常に小さな2枚のヒダ(粘膜)がぶつかり合うことで生まれます。

ここで重要になるのは声帯の機能が100%使えているか?ということ。


声帯がどの程度機能しているかには大きな個人差があります。

声帯が機能している人とそうでない人の違いを、例をあげて比較してみましょう。


声帯の機能を100%使えている人をAさん、声帯の機能を50%しか使えていない人をBさんとします。ちなみにどちらも男性とします。


AさんもBさんも原曲キーの高さで、official髭男dismの「Pretender」を歌うとします。

言わずと知れた大ヒット曲、キーも高いですよね...



Aさんは「声帯を動かす筋肉」だけがピンポイントで働くため、お腹に多少力は入りますが、それ以外の部分は疲れたりしません。さらに高いサビも力むことなく出すことができます。

そのためAさんの場合「声帯はしっかり働いていて、それ以外の筋肉は休日」といった感じですね。


一方Bさんはどうでしょう


Bさんは高いサビの部分が出づらく、一生懸命声を張り上げて出そうとしていました。息も続かず苦しそうにしています。

挙げ句の果てには喉に痛みを感じてしまいました。

これは、Bさんが使えていない残りの声帯の機能50%を、他の筋肉で補おうとした結果です。


そのためBさんの場合は「声帯は働かなきゃいけないのにサボっていて、それ以外の筋肉が休日にもかかわらず出勤している」というような状態です。


小さな粘膜である声帯を動かすのに、たくさんの筋肉を使う必要はありませんが、声帯が半分機能していないBさんがAさんに対抗しようとすると、どうしても他の筋肉を働かせてしまいます。

ここで働いた他の筋肉たちは、本来発声に必要ない筋肉であるにもかかわらず、発声に無理矢理使われるため、いい声が出るはずもありません。声帯じゃない部分を使って声を出そうとしている状態ですからね...

さらには、声帯が普段機能していないということは、言い換えれば声帯が「運動不足」状態にあることを意味します。


普段「運動不足」の声帯が「Pretender」のような高音の曲に対応できるわけがないですよね...

「運動不足」だから、普段出さない高いキーの曲を急に歌うと喉が痛くなったり、声がかすれたりするのです。


普段全く運動しない人が、いきなりフルマラソンに出場するのと同じですね...



「Pretender」を例に出して説明しましたが、これを普段の話し声に置き換えて考えましょう。


みなさんの「話し声」は「声帯」をしっかり使っている声ですか?


もし「声帯」の機能がしっかり使えた状態で普段から話せているのであれば、それはまさしく「地声」と言えるでしょう。


しかし、そうでなければ、みなさんの話し声は「地声」ではない「〇〇声(鼻声、ダミ声、曇り声など)」です。


これらのことから「地声」とは


「100%声帯が機能した話し声」と言えるでしょう。


声帯が機能してさえいれば、話し声は高くても、低くてもいいのです。

声帯が機能した後に、その人の本当の意味での個性的な声質が完成します。

例えば外人のように鼻が高く彫りの深い歌手、ONE OK ROCKのTakaさんや、CHEMISTRYの堂珍さんは、話し声の時点で鼻腔(鼻の奥)に深い響きを感じますが、これは決して鼻声ではありませんよね。



ここで今回の記事タイトル「退化した地声」の意味がなんとなくわかってくると思います。

人間の体の機能は、使わずにいると徐々に退化していきます。

声帯も同じです。


特に日本人は海外の人に比べ控えめな人が多く、普段からあまりはっきり声を出さなかったり、小さめのボリュームで話す人が多いと言われています。

さらに、日本語は英語などに比べ抑揚が少ないため、声帯の運動量はさらに少なくなります。


これらのことから多くの人は声帯の機能が退化した状態が当たり前になってしまうため、そのことに気づくことすらできないのです。

そうなれば声帯は働かず、別の筋肉は楽をするどころか過剰に働き、変な癖がついてしまう。


「普段何気なく出している声」=「楽な声」として体感してしまうのは、上記のように声帯が本来の機能を忘却することで起こります。



このような状態に気付き、声帯本来の機能を引き出してあげることがボイストレーニングの役割になります。

声帯が本来の機能を取り戻せば、ミックスボイスに大きく近付きます。

その方法などにつきましては、また後日改めて紹介させていただければと思います。


最後までご覧いただきありがとうございました。


ではまた次回!

















Mellow Voice

歌モノ楽曲紹介サイト。 主に国産ブラックミュージック。J-R&B(日本語R&B)J-RAP(日本語ラップ)など

0コメント

  • 1000 / 1000