28.南の島から 後編

ご覧いただきありがとうございます。


今回も前回に引き続き楽曲紹介記事になります。

前回は主に安室奈美恵、MAX、SPEED、DA PUMPなど沖縄アクターズスクール出身アーティストが隆盛を誇った90年代中頃から2000年代前半までの楽曲を取り上げました。

CDがかなり売れた時期ということもあり多くの沖縄出身ダンス&ヴォーカルグループがヒットを連発。他の追付いを許さない圧倒的な勢いで音楽シーンを席巻していきましたね。


今回はその続き。


先述した通りビッグヒットを連発した沖縄アクターズスクール勢でしたが、2000年代に入り、R&Bブームが沈静化すると同時にその勢いは少しづつ落ち着いていきます。

実際この頃はMAXやSPEEDも各々の事情でメンバーの一時脱退や解散がありましたので、グループとしても転換期を迎えていたのだと思います。

90年代後半には安室奈美恵さんも結婚や出産がありましたしね。

にしても安室さんの出産からの復帰が早い !

ものすごいタフネスとプロ意識ですよね...


とまあそんなこんなで今回はミュージックシーンが新たな局面へと移行しつつあった2000年代前半から現在に至るまでの記事になります。


周知の事実ですが2000年以降は90年代ほどCDが売れた時期ではありません。その上テン年代以降は配信リリースや音楽ストリーミングサービスも当たり前になってくるので、前回記事ほど爆発的なヒットを飛ばすアーティストが出にくくなっているのが現状ではあります。

しかし、リリーススケジュールや事務所の方針、売り上げなどに縛られない独自の仕方でその才能を大いに発揮しているアーティストが数多くいるのもまた事実。

特に近年の沖縄におけるHIP HOPの隆盛を見れば明らかでしょう。


時代や形は移り変わってもこの地からは絶えず新しい才能が生まれ続けています。


鬼滅の刃で大ブレイク中のLiSAも沖縄アクターズスクール出身ですしね...


最後までご覧頂ければ幸いです。



ORANGE RANGE 「キリキリマイ」(2003)

R&Bブームが過ぎ去り、音楽シーンが新たな局面へと差し掛かっていた2003年。

彗星の如く音楽シーンに登場し瞬く間にブレイクしたのがこのORANGE RANGE。メジャーデビュー時のメンバーはYAMATO、HIROKI、RYO、NAOTO、YOH、KATCHANの沖縄出身6名。

どこかラフな印象を与える佇まいと中毒性のある名曲の数々は当時の若者を熱狂させるのに十分すぎるインパクトを放っていました。

2003年頃は筆者も学生でしたが、周りのクラスメイトたちがめちゃくちゃORANGE RANGEにハマっていて、大半のヒット曲はいつの間にか脳裏に焼き付くという...それくらい当時の彼らが強烈な影響力を持っていたのを覚えています。

ミリオンヒットに迫る売り上げを記録した「花」や、彼らの代名詞とも言える「ロコローション」「上海ハニー」はもちろんですが、この「キリキリマイ」もメジャーデビュー曲に相応しい勢いと熱量に満ちた仕上がりが熱い !





安良城紅(BENI) 「Here Alone」(2004)

高い歌唱力と海外生活を活かした堪能な英語でハイレベルな作品を多数発表した女性シンガー安良城紅(あらしろ べに) アメリカ人の父と沖縄出身の母を持つ。

後に「BENI」に改名、テン年代に入ると国内男性シンガーの楽曲を英詞カヴァーした「COVERS」シリーズが大いにヒットしましたね。

本曲「Here Alone」はそんな彼女がまだデビュー間もない2004年にリリースされたエキゾチックなナンバー。

同じくエキゾチックな魅力を放ったUAやSugar Soulの作品を手がけたことで有名な朝本浩文プロデュースということもありサウンドクオリティもピカイチ。名曲です。

先述のカヴァーアルバムなどBENIに改名後の作品の方が知名度も高い気がしますが、改名前の作品にも良作多し ! 気になる方は是非。




HY 「NAO」(2006)

そのデビューから現在に至るまで、沖縄はもちろん全国的にも高い人気と知名度を誇るご存知沖縄出身バンドHY。

現メンバーは新里英之(Vo&Gt)、名嘉俊(Dr)、許田信介(Ba)、仲宗根泉(Key&Vo)の4名。

シングルリリースを一切せずに絶大な支持を得るスタンダードナンバーをこれほど多く発表しているアーティストもそうそう居ないでしょう。

テン年代以降の配信やストリーミングサービスの台頭で「アルバム作品の軽量化」が指摘される中、非常に貴重な存在と言える気がします。

2006年発表の4thアルバム「Confidence」に収録された「NAO」はゴスペルを大々的に取り入れたナンバー。

純粋な恋心を表現した飾らないリリックをゴスペルクワイヤが引き立てる名曲。

この曲や「366日」もそうですが、HYは結構カラオケ人気も凄いですよね...




多和田えみ 「涙の音」(2009)

多和田えみは2008年にメジャーデビューした沖縄県宜野湾市出身の女性シンガー。一曲毎に違った印象を与える高い表現力のヴォーカルが持ち味で、個性的な楽曲の数々を巧みに歌いこなします。

作詞家、作曲家としても有名で、JUJUやE-girlsなど多くのアーティストに楽曲提供をするなど裏方としてもその才能を多いに発揮しています。

本曲「涙の音」は豪華クリエイターが多く参加した超絶名盤との呼び声高い1stフルアルバム「SINGS」と同時発売された、同アルバムにおけるリードトラック。

シンガーソングライター葛谷葉子が作詞・作曲を手掛けた美メロバラードで、筆者はこの曲聴くと葛谷葉子のヴォーカルが同時に聴こえてくるような感覚になります。

セルフカヴァーしたのも聴いてみたいですよね。





黒木メイサ 「5-FIVE-」(2010)

当時モデルや女優としての活動で既に高い評価を受けていた黒木メイサですが、その歌とダンスも超一級品。彼女もまた沖縄アクターズスクール出身者。筆者も最初モデルさんのイメージが強かったので、彼女の音楽作品を初めて耳にした時は非常に驚きました。純粋にカッコイイです。

彼女の作品に携わるクリエイター陣も実に強力で、三浦大知の作品などで活躍するNao'ymtやMomo"Mocha"N.、U-Key zoneなどいわゆる「ソロで歌って踊れるアーティスト」の作品に欠かせないメンツばかり。

2012年には赤西仁との婚約を発表、出産や育児などもありリリースした作品数こそ多くないものの、彼女の作品はどれも最高にスタイリッシュ。

「アーティスト黒木メイサ」を強く支持するファンは今尚多し。





Sky' The Limit 「ミナミカゼ」 (2017)

2013年に開催された「X FACTOR OKINAWA JAPAN」のグループ部門で初代グランプリを勝ち取り松尾氏プロデュースの元デビューした「Sky's The Limit(スカイズ・ザ・リミット)」

メンバーは沖縄出身の前田秀幸と大城貴史、大阪出身の若江爵紀と山本卓司の4名。

その最大の特徴は4人それぞれがソロパートで圧倒的個性を発揮できる実に多様性のあるヴォーカル。エルトン・ジョンのカヴァー「Sorry Seems To Be The Hardest Word」などを聴いていると、同じく同曲をカヴァーしたこれまた個性的な4人組からなるUKのヴォーカルグループ「Blue」を想起せずにはいられません。

大城さんの美声とかアントニー・コスタにそっくりですよね。美しいです...

本曲「ミナミカゼ」はゴスペラーズの黒沢薫も参加したフルアルバム「Mellow but Funky」に収録された川口大輔作曲の傑作ナンバー。シティポップ、AOR、ジャズ、ゴスペルなど様々なジャンルの良さが活かされたサウンドが極上。






三浦大知 「Be Myself」(2018)

前回記事で紹介した沖縄アクターズスクールの小中学生からなる7人組ダンス&ヴォーカルユニット「Folder」

その活動終了後から4年が経過した2004年。当時から天武の才能を発揮していた三浦大知は更なるパワーアップをして再び表舞台に復帰。その超人的な才能は現在に至るまで進化し続け、決して留まることを知りません。

もちろん彼を支えるサウンドクリエイターたちも相当な強者ばかり。

UTA、Momo"Mocha"N.、AKIRAなど、最高峰のクリエイターが彼の作品を強力にバックアップ。言わずもがなクオリティは破格です。

特に本曲「Be Myself」など数多くの楽曲でその才能を最大限に引き出し続けているNao'ymtとの奇跡的な邂逅は日本の音楽シーンに風穴を空ける最重要事項と言っていいでしょう。

「Who's The Man」「Delete My Memories」「Anchor」「Unlock」「Blizzard」「球体」...

挙げればキリがないですよね...








そしてここからは現在沖縄で隆盛を誇るHIP HOP系アーティストから。

とは言え、沖縄出身のHIP HOPアーティストはかなり沢山いらっしゃるので、チョイスに凄く迷いましたが、やはり歌モノを好む筆者ですのでラップはもちろん歌唱も堪能な筆者お気に入りのアーティストを何組かご紹介していきます。




Yo-sea 「Coconuts」(2020)

以前「オルタナティブR&B」の記事でも登場した沖縄出身のラッパー兼シンガーYo-sea(ヨーシー)

多くのHIP HOP系作品をプロデュースするクリエイターチームBCDMGに所属し、ソロ作品はもちろん、数多くの客演でその名を知らしめる今沖縄で最もクールなアーティスト。

HIP HOPをベースにしつつも、その作品には彼独特の緩やかなムードが漂い、聴き手を幻想的な世界へ誘います。

そんな彼の最新EP「Kujira」のリード曲となる「Coconuts」は前向きなリリックと彼の美声が非常に心地良いスローナンバー。

なんかまた歌上手くなりましたよね...

ファッションセンスや甘いルックスも相まって素直にカッコいいです。惚れますね。





3House 「Familia feat. Yo-sea」(2019)

上記Yo-seaを含む沖縄のアーティスト集団SouthCatから。こちらも優れた作品を発表しているラッパー兼シンガーの3House(スリーハウス)

Yo-seaとの名コラボレーション作品「Dejavu (feat.Yo-sea)」に引き続き再び両者がタッグを組んだ本曲「Familia feat. Yo-sea」ではその相性の良さを再確認。

輪郭を抑えた幻想的な歌声がサウンドに溶け込む3Houseと持ち前の美声を響かせるYo-sea。

似ているようで全く違う二人の歌声。近いような、遠いような、二人の絶妙な距離感がカッコイイです。

美しいMVを撮影したのは同じくSouthCatのkiyora

他にも3Houseの作品だとメロウな質感の「You」が激しくお気に入り。





Awich 「NEBUTA feat.kZm」(2020)

そして最後はこのお方...

史上最高のフィメールラッパーとの呼び声高い現HIP HOPシーンの頂点に君臨するカリスマ「Awich(エイウィッチ) 」

その作風、歌声、佇まいは最高にエキゾチックでドープ。

堪能な英語からなる圧倒的なフロウと歌唱力、禍々しいサウンドプロダクションなど他の追随を許さない作品の数々は中毒性高し !

とにかく濃いいです...

本曲「NEBUTA feat.kZm」は青森ねぶた祭りをHIP HOPに取り入れたナンバー。黒人音楽と日本の伝統芸能を結ぶ実に価値ある一曲。

起業家でもあり、その音楽や知名度を活かした発言力で自身のルーツである沖縄の様々な文化や伝統を世界に発信。

女と男、アンダーグラウンドとオーバーグラウンド、沖縄と世界、いや日本と世界を股に掛ける女神の快進撃はまだ始まったばかりです。







いかがでしたでしょうか?

今回は以上になります。

90年代の沖縄アクターズスクール勢の台頭から近年のHIP HOP隆盛までざっくりご紹介いたしました。

皆様のお気に入りの作品はございましたか?

にしても凄い才能を持ったアーティストがこれほど多く存在しているのに驚きますよね。

やはり沖縄には何か凄い力が働いているのではと思ってしまいます。

最後までご覧いただきありがとうございます。

ではまた次回 !


Mellow Voice

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